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東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)138号 判決

一 前掲請求の原因事実中、本願発明につき、出願から審決の成立にいたる特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に対する原告主張の取消事由の存否について審究する。

(一) 公知の第二引用例に、砂、砂利の骨材、セメント、水及び界面活性剤から成り、微細な空気孔が分散する軽量コンクリートになりうる組成物についての記載があること及び本願発明と右引用例のものとが、原告主張の(1)及び(4)の点において相違することは当事者間に争いがない。

原告は、両者間にはなおその主張の(2)及び(3)の点の相違がある旨を主張する。しかし、(2)の点については、前掲本願発明の要旨及びいずれも成立に争いのない甲第二ないし第四号証(本願発明の明細書及びその補正書)によれば、本願発明において表面活性化添加剤は、結合材相に骨材を均等に分布させるため用いられ、空気を連行するものであることが認められるが、右添加剤の内容については、明細書中、特許請求の範囲には、何ら限定的記載がないから、右のような作用を営むものであれば足り、明細書中、発明の詳細な説明の項に記載された樹脂酸塩等はその例示にすぎないものと認めるのが相当であり、一方、成立に争いのない甲第六号証(第二引用例)によれば、同引用例の発泡剤は、気泡を発生させると同時に、気泡とセメント粒子の界面とを強化し安定させる界面活性剤としての作用をも営むというのであるから、両者の表面活性化添加剤と界面活性剤との内容に差異があるとすることはできない。次に、(3)の点については、前掲甲第六号証によれば、第二引用例の発泡剤をセメントの〇・五重量%用いれば、形成硬化したコンクリートに含まれる空気量はその三〇容量%になる旨の記載があるから、これをコンクリート中に混合される水、セメント等の結合材相のみの容量に対する割合に直せば、更に大きな数値になることが明らかであり、同時にまた、前掲甲第二ないし第四号証及び第六号証の記載に徴すれば、本願発明において規定し、また右引用例において示す空気量は、いずれもコンクリートの強度からみて適当なものとされていることが明らかであるから、同引用例の例示する前記のような空気量は、三〇容量%より大きくなつても、本願発明の上限数値たる六〇容量%の範囲内にとどまるものであることが推認され、したがつて、両者間には結合材相に含有する空気量について相違があるとすることはできない。なお、成立に争いのない甲第七号証には、第二引用例に示された骨材、結合材にセメントの重量の〇・五%の発泡剤を添加したが、六・五容量%の空気量を含んだコンクリートが得られたにすぎない旨、追試結果の記載があるが、元来、第二引用例記載のような組成物によつて製造されたコンクリート中の空気量の数値は、発泡剤(界面活性剤)の調製法、砂・砂利の粒度・性状、コンクリート製造の際の組成物の混練程度如何によつて差異を生じ、また、その測定の条件が異なることによつて影響を受けることはそのコンクリート製造方法自体から明らかであるから、甲第七号証記載の追試例のみをもつて同引用例の製法においては三〇%の空気量が得られないとする資料とするに足りない。

(二) 進んで、(1)の相違点について考えると、成立に争いのない甲第五号証(第一引用例)によれば、公知の第一引用例の骨材が発泡ポリスチレン粒子のみの場合をも含むことは明らかにされていないが、右粒子は多孔性、非脆性、弾性の特徴を有し、かつ、攪拌、混合に耐えるため、砂、砂利のような骨材に取つて代り混合物の重量を大巾に減少するのみならず、それ自体の重量が極めて軽いにかかわらず、混合物全体に均一に分散するため、軽量コンクリートの骨材として用いうる旨の記載があるから、当業者であれば、これに基づき本願発明のように、骨材として膨脹重合体粒子のみを用いてみる程度のことは容易に考え及ぶところである。加えて、第二引用例に、コンクリート層中に微細な気泡を行きわたらせる発泡剤が示され、これが界面活性剤ともなりうることの記載があることは当事者間に争いがなく、また、前掲甲第六号証によれば、右引用例には、軽量コンクリート製造において樹脂酸塩、アルキルスルホン酸ソーダのみでは、空気量の変化とともに強度が低下し、気泡も不安定で均一にならない欠点があるので、セメント粒子を分散させることにより強度の低下を喰い止め、微細な気泡を入れて均一にするように考慮した結果、同引用例の示すような界面活性剤ともなりうる発泡剤を使用するものである旨の記載があることが認められるから、膨脹重合体粒子のコンクリート骨材としての性質、軽量コンクリート製造における空気量と骨材、結合材の均一又は分離並びにコンクリート強度との関係、界面活性剤の作用等に関する各引用例の以上のような記載事項からすれば、骨材として使用すべき膨脹重合体粒子の密度と空気を含有した結合材相の密度との関係を考慮しつつ、界面活性剤を使用すれば、右粒子が結合材相から分離せず、これらの分散が均一に行われ、ひいて成形硬化した軽量コンクリートの強度が高いものとなるであろうことは当業者の予測しうるところである。したがつて、第二引用例の骨材である砂、砂利の全部に代えて、第一引用例に示された膨脹重合体粒子、すなわち、本願発明に規定された密度を有する膨脹重合体粒子のみをもつて骨材とすることは当業者の容易にできる程度のことであるというべきである。

(三) 次に、(4)の相違点について考えると、骨材を右のような粒子とし、結合材相に含有する空気を本願発明所定の量とするときは、第二引用例のものと相違して、強度がありながら本願発明の目的とする程度の低い密度の、しかも原告主張のような建築材として使用しうるコンクリートが得られるという効果がもたらされるのは、そのような組成物の構成の当然の結果であり、また、各引用例から予測しうる程度のことにすぎない。

(四) 以上の次第で、本願発明は各引用例の記載事項を組合せることにより容易に発明をすることができるものというべきであつて、本件審決の認定、判断には原告主張の誤りを認めることができない。

三 よつて、本件審決の違法を主張して、その取消を求める原告の本訴請求を理由がないものとして棄却する。

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